医療広告ガイドラインとは?|NG事例集と正しい表現を大阪のホームページ制作会社が解説

医療広告ガイドラインとは?|NG事例集と正しい表現を大阪のホームページ制作会社が解説

「クリニックのホームページを作りたいけど、医療広告ガイドラインって何?」「どんな表現がダメで、どう書けばいいの?」

医療機関のホームページ制作や運用を担当されている方なら、一度はこんな疑問を抱いたことがあるのではないでしょうか。医療広告ガイドラインは、患者さんを守るための大切なルールですが、専門用語が多くて分かりにくいのも事実です。

この記事では、制作会社の方もクリニックの担当者の方も安心してホームページを作れるよう、医療広告ガイドラインの基本から、具体的なNG表現とその改善方法まで、豊富な実例を使って分かりやすく解説します。「これって大丈夫?」という疑問にお答えしながら、患者さんに信頼されるホームページ作りのお手伝いをします。

病院・クリニックのホームページが「広告」になる理由を知ろう

1-1:普通の会社ホームページと何が違う?医療機関だけの特別ルール「医療広告ガイドライン」

医療機関のホームページには、一般企業のサイトにはない特別なルールが適用されます。その理由は、医療が人の命と健康に直接関わるサービスだからです。

なぜ医療機関だけ厳しいルールがあるの?

医療広告ガイドラインが存在する背景には、過去に起きた深刻な問題があります。

例えば以下のような事例があります。

  • 「必ず治る」という誇大な表現で患者を集めたクリニックで、実際には治療効果がなく健康被害が発生
  • 「他院では治せない症例も当院なら」という比較表現で患者を誘引し、高額な自由診療を強要
  • 根拠のない「満足度99%」といった統計を使って信頼性を偽装

こうした問題から患者さんを守るため、医療機関の広告には厳格なルールが設けられているのです。

「認知性」「誘引性」「特定性」って何?

医療広告ガイドラインでは、以下の3つの要素を満たすものが「広告」として規制対象になります:

  1. 認知性:一般の人が知覚できる状態にある
  2. 誘引性:患者の受診を誘引する意図があること  
  3. 特定性:医療機関が特定できること

つまり、クリニックの名前と連絡先が書かれたホームページは、自動的に「医療広告」として扱われ、ガイドラインの対象となります。

1-2:ホームページも監視されてる?ネットパトロールの実態

2018年の医療法改正により、ホームページも医療広告の規制対象となりました。それまでは「広告」ではなく「情報提供」として扱われていましたが、現在は厳格な監視下に置かれています。

厚生労働省は「医療機関ネットパトロール」という監視体制を運用しています。ウェブサイトも継続的に監視対象です。

ガイドライン違反が発覚するパターン

  1. 定期的な巡回監視
  2. 通報による発覚
  3. 競合他院からの指摘
  4. 患者からの苦情

「バレなければ大丈夫」という考えは非常に危険です。現在の監視体制では、違反の発見リスクは高いと考えるのが妥当です。

1-3:制作会社とクリニック、責任はどちらにある?

ホームページ制作における責任の所在は、契約内容によって決まりますが、最終的な法的責任は「開設者(医療機関)」にあります。

責任分担の基本的な考え方

医療機関(クリニック)の責任
  • 掲載内容の最終確認と承認
  • 医療広告ガイドラインの遵守
  • 違反発覚時の対応と改善
  • 継続的な内容の管理・更新
制作会社の責任
  • ガイドラインに準拠したサイト設計
  • 違反の可能性がある表現の事前チェック
  • クライアントへの適切な助言
  • 技術的な修正対応

契約書に盛り込むべき条項

トラブルを防ぐため、制作契約には以下の項目を明記することが重要です
制作会社側の工数が多くなる分、コストは増加いたしますので適宜ご判断ください。

  1. 制作会社は医療広告ガイドラインに準拠したサイト制作を行う
  2. 違反の可能性がある表現について事前に指摘・提案を行う
  3. ガイドライン改正時の対応方法と費用負担について
  4. 行政指導時の修正対応と責任範囲について
  5. 継続的な監視・チェック体制について

医療広告ガイドラインの具体的なNG表現と正しい言い換え表現

2-1:効果を断定する表現(「必ず」「絶対」「100%」系)

医療広告で最も多い違反パターンが、治療効果を断定する表現です。医療には個人差があり、100%の効果を保証することはできないため、このような表現は禁止されています。

効果断定表現のNG→OK置き換え事例

NG表現 OK表現
当院なら必ず治ります 症状の改善を目指して治療を行います
痛みゼロの治療 痛みの軽減に配慮した治療を心がけています
100%成功の手術 豊富な経験を活かし、安全な手術を行います
副作用は一切ありません 副作用のリスクを最小限に抑えるよう努めています
即日で症状が改善 症状により改善までの期間は異なります
1回で完治 症状に応じて治療回数を決定します
すぐに効果を実感 治療効果には個人差があります
絶対に安全な治療 安全性に配慮した治療を行います

2-2:他院との比較・優位性を示す表現(「No.1」「最高」「最先端」系)

比較表現や最上級表現も医療広告では禁止されています。患者の適切な医療選択を阻害し、競合他院との不公正な競争を生む可能性があるためです。

比較・最上級表現のNG→OK置き換え事例

NG表現 OK表現
○○市で症例数No.1 年間1,200件の症例実績があります(2024年実績)
地域で最も選ばれているクリニック 地域の皆様に支えられて開院15年
最先端の治療法 ○○治療法を導入しています
業界最高水準の技術 高度な技術を要する治療に対応します
他院では治せない症例も当院なら 幅広い症例に対応しています
他のクリニックよりも安い料金 明確な料金体系で安心して治療を受けていただけます
近隣の病院にはない専門治療 ○○治療を専門的に行っています
唯一無二の治療 当院独自の治療プロトコルに基づいた治療を行います

2-3:患者の声・データ・写真の危険な使い方

患者の体験談、統計データ、ビフォーアフター写真は、医療広告ガイドラインで特に厳しく規制されている分野です。ホームページへの「患者の声」「体験談」「口コミ転載」は原則避け、FAQ形式など客観的な情報提供へ置き換えるのが安全です。

患者の体験談・口コミ関連のNG→OK置き換え事例

NG表現 OK表現
患者の体験談「3日で痛みが完全になくなりました」 FAQ「治療後の一般的な経過について教えてください」
「患者様の声:先生の治療は神の手です」 「治療方針:患者様お一人お一人に丁寧な治療を心がけています」
口コミサイトからの転載「★★★★★ 絶対におすすめ」 「治療に関するご質問はお気軽にお尋ねください」

統計データの不適切な使用のNG→OK置き換え事例

NG表現OK表現
満足度99%(根拠・調査方法が不明) 患者様アンケート結果:大変満足32%、満足58%(2023年1-12月実施、回答者数120名)
成功率95%(母数・条件が不明) ○○治療の適応となった患者様95名中、90名で症状の改善を確認(2023年実績、個人差があります)
リピート率業界最高 継続して通院いただいている患者様が多くいらっしゃいます

業種別!実際にあった違反事例と改善のコツ

3-1:歯科医院でよくあるNG表現と正しい伝え方

歯科医院のホームページでは、審美治療、インプラント、矯正治療などの自由診療に関する表現で違反が多く発生しています。

インプラント治療の表現改善例

NG表現 OK表現
痛くないインプラント治療 麻酔を使用し、痛みの軽減に努めます。術後に腫れや痛みが生じることがあります
一生もののインプラント 適切なメンテナンスにより長期間使用できます(個人差があります)
天然歯と全く同じ 天然歯に近い機能の回復を目指します

審美歯科・ホワイトニングの表現改善例

NG表現 OK表現
真っ白な歯になります 歯の色調改善を行います(効果には個人差があります)
芸能人のような美しい歯 患者様のご希望に合わせた歯の形・色調に調整します
1回で劇的に白くなる 治療回数は歯の状態により異なります

矯正治療の表現改善例

NG表現 OK表現
短期間で美しい歯並びに 治療期間は症状により異なります(目安:6ヶ月〜2年)
目立たない矯正装置 透明なマウスピース型矯正装置を使用します
痛みのない矯正 治療初期に軽度の痛みや違和感を感じることがあります

3-2:美容皮膚科・美容外科の注意すべき表現

美容系クリニックは自由診療が中心のため、特に厳格な情報開示が求められます。

美容皮膚科の表現改善例

NG表現 OK表現
シミが完全に消える シミの改善を目指した治療を行います(効果には個人差があります)
10歳若返る 年齢に応じたスキンケア治療を提案します
ダウンタイムなし 治療後に軽度の赤みや腫れが生じることがあります

痩身・ダイエット治療の表現改善例

NG表現 OK表現
確実に痩せる 体重減少のサポートを行います(効果には個人差があります)
リバウンドしない 治療後の体重維持についてもアドバイスします
1ヶ月で-10kg 治療効果は個人の体質や生活習慣により異なります

3-3:内科・整形外科・眼科での改善事例

一般診療科でも、検査機器や治療法の説明で違反が発生することがあります。

内科の表現改善例

NG表現 OK表現
最新のCTで病気を早期発見 CT検査により詳細な画像診断を行います
この検査で病気が100%わかる ○○検査により病気の診断を行います(検査には限界があります)
がんを確実に見つける がん検診により早期発見に努めます

整形外科の表現改善例

NG表現 OK表現
手術で完治します 手術により症状の改善を目指します
痛みが完全になくなる 痛みの軽減を図る治療を行います
元通りに動くようになる 機能の回復を目指したリハビリテーションを行います

眼科の表現改善例

NG表現 OK表現
視力が必ず回復する 視力の改善を目指した治療を行います
メガネが不要になる メガネへの依存度の軽減を図ります
手術に失敗はない 安全性に配慮した手術を行います

制作から運用まで!違反を防ぐ実践的チェック方法

4-1:制作会社選びと契約時の確認ポイント

医療広告ガイドラインに対応できる制作会社を選ぶことは、トラブル防止の第一歩です。

制作会社への確認事項チェックリスト

  • 医療機関のホームページ制作実績は豊富か
  • 医療広告ガイドラインの最新情報を把握しているか
  • 過去に行政指導を受けた案件への対応経験があるか
  • ガイドライン改正時の対応体制は整っているか
  • 制作後の継続的なサポート体制があるか

実績確認の具体的な質問例

  1. 「医療機関のサイト制作実績を教えてください」
  2. 「最近のガイドライン改正内容をご存知ですか?」
  3. 「行政指導を受けた場合の対応フローはありますか?」
  4. 「制作後の法令変更への対応はどうなりますか?」

4-2:公開前の最終チェック!見落としがちなポイント

ホームページ公開前の確認作業は、違反を防ぐ最後の砦です。

公開前チェックリスト

基本的な表現のチェック
  • 効果を断定する表現(「必ず」「絶対」「100%」等)がないか
  • 比較・最上級表現(「No.1」「最高」「最先端」等)がないか
  • 他院との比較表現がないか
  • 根拠のない統計データがないか
  • 患者の体験談・口コミが掲載されていないか
自由診療関連のチェック
  • 治療内容の詳細説明があるか
  • 費用の総額表示(税込)があるか
  • 治療期間・回数の記載があるか
  • 主なリスク・副作用の説明があるか
  • 「効果には個人差があります」の記載があるか
  • 未承認医薬品等の使用に関する説明があるか
写真・画像のチェック
  • ビフォーアフター写真に必要な情報が併記されているか
  • 患者の同意を得た写真のみ使用しているか
  • 過度な加工・修正がされていないか
  • 医療機器の写真に誇大な説明がついていないか

4-3:日常的な更新作業で気をつけること

ホームページは公開後の継続的な管理が重要です。日常的な更新作業でも違反リスクがあります。

更新作業での注意ポイント

お知らせ・ブログ投稿時のチェック項目
  • 治療効果を断定する表現がないか
  • 特定の治療法を過度に推奨していないか
  • 患者の症例を特定できる情報がないか
  • 医療機器の効果を誇大に表現していないか
よくある更新時の違反例とその改善
NG表現 OK表現
「○○さんの治療が成功しました!」 「○○治療を行いました(効果には個人差があります)」
「新しい機器で治療効果アップ!」 「新しい医療機器を導入しました」
「期間限定!確実に効果が出る治療」 「期間限定キャンペーン実施中(治療効果には個人差があります)」
更担当者向けチェックポイント

投稿前に以下を確認してください

効果の断定表現チェック

「必ず」「絶対」「100%」→NG
「目指します」「心がけます」→OK

比較表現チェック

「No.1」「最高」「他院より」→NG
「豊富な経験」「専門的に」→OK

患者情報チェック

 個人が特定できる情報→NG
 一般的な症例説明→OK

写真チェック

患者の同意なし→NG
同意取得済み+説明併記→OK

トラブル発生時の対応と予防策

5-1:指導を受けた時の適切な対処方法

万が一行政指導を受けた場合、適切な対応により問題の拡大を防ぐことができます。
以下のフローで対応しましょう。

事実関係の確認と記録

  • 指導内容の詳細を文書で記録
  • 該当するウェブページのスクリーンショット保存
  • 指導を行った行政機関の連絡先確認
  • 指導の法的根拠の確認

該当箇所の即座の修正・削除

  • 指摘された表現の削除または修正
  • 関連ページの確認と修正
  • サーチコンソールでURL送信・サイトマップ更新
  • 修正前後の記録保存

修正完了の報告

  • 行政機関への修正完了報告
  • 修正内容の詳細説明
  • 今後の再発防止策の提示

再発防止策の検討・実施

  • 更新フローの見直し
  • 類似表現の全サイトチェック
  • 担当者の再教育実施
  • 第三者チェック体制の構築

関係者への情報共有

  • 院内スタッフへの情報共有
  • 制作会社への連絡と対策協議
  • 必要に応じて顧問弁護士への相談

5-3:実用的な表現集

日常的に使える適切な表現例をご紹介します。

カテゴリNG表現 OK表現
症状改善 必ず治る 症状の改善を目指します
治療方法 この方法なら確実 ○○療法による治療を行います
安全性 副作用なし 副作用のリスクについて説明します
専門性 日本一の専門医 ○○専門医の資格を持っています
比較優位 地域No.1 年間○○件の実績があります
費用 どこよりも安い 料金表を提示し、総額を明記

リスク・副作用の説明文例

  1. 「治療には個人差があり、期待した効果が得られない場合があります」
  2. 「治療後に一時的な腫れや痛みが生じることがあります」
  3. 「まれにアレルギー反応や感染症が起こる可能性があります」
  4. 「持病や体質により治療が受けられない場合があります」
  5. 「治療効果の持続期間には個人差があります」

5:医療広告ガイドラインまとめ

医療広告ガイドラインは、患者さんが適切な医療選択を行えるよう支援するための重要なルールです。一見複雑に見えますが、基本的な考え方を理解し、適切な表現方法を身につければ、患者さんに信頼されるホームページを作ることができます。

重要なポイントの再確認

  • 効果の断定表現は避け、「目指します」「心がけます」といった表現を使う
  • 比較・最上級表現は使わず、客観的事実を記載する
  • 自由診療では治療内容・費用・リスクを限定解除要件に沿って明確に記載する
  • 患者の体験談は掲載せず、FAQ形式で情報提供する
  • 継続的なチェック体制を構築し、常に最新のガイドラインに対応する

制作会社の方もクリニックの担当者の方も、この記事を参考に、患者さんにとって有益で信頼できるホームページ作りを進めてください。迷った時は専門家に相談し、常に患者さんの立場に立った情報発信を心がけることが大切です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事例については必ず行政機関や専門家にご相談ください。医療広告ガイドラインは改正される場合がありますので、最新の情報は厚生労働省の公式サイトでご確認ください。