カスタマーハラスメントポリシーとは?ホームページ掲載の重要性と例文

カスタマーハラスメントポリシーとは?ホームページ掲載の重要性と例文

近年、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」という言葉が広く知られるようになり、顧客対応のあり方が企業に問われています。理不尽な要求や暴言によって、現場の従業員が大きな負担を抱えるケースも少なくありません。
こうした状況を受け、企業のホームページに「カスタマーハラスメントポリシー(基本方針)」を掲載する動きが広がっています。対応方針を事前に示すことで、トラブルの抑止や従業員を守る判断基準として機能させる狙いがあります。
カスハラ対策は現場対応の問題にとどまらず、サービス品質や人材定着にも影響する経営課題です。
本記事では、ホームページ掲載の意義と、実務で使える記載ポイント・例文を解説します。

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カスタマーハラスメントが問題視される背景とホームページ掲載の動き

かつては「お客様は神様」という言葉が独り歩きし、多少の無理難題でも我慢して対応することが美徳とされる場面がありました。もちろん、顧客を大切にする姿勢自体はビジネスの基本です。ただし、その考え方が行き過ぎると、理不尽な要求や暴言に対しても「受け止めるのが当然」という空気が生まれ、現場の負担が限界を超えてしまいます。

今でこそ少なくなりましたが、弊社でも過去に自分の思い通りにならないと「怒鳴る」「ものを投げてくる」という顧客もいました。無理無茶な要求に応えるため徹夜で作業をしたこともあります。

時代が変わった背景として大きいのは、企業を取り巻く環境が複雑になったことです。人手不足が続き、現場の一人ひとりにかかる負担が増えています。加えて、SNS等による拡散リスクもあり、対応の仕方によっては企業側の評判に影響が及ぶこともあります。こうした条件が重なることで、顧客対応の在り方を「現場任せ」にし続けることが難しくなっています。

ここでは、なぜカスハラが社会的問題となり、企業がホームページでの宣言に踏み切るようになっているのか、背景を整理します。

1-1 厚生労働省も対策を進める「カスハラ」の実態と現状

カスタマーハラスメント(カスハラ)は、顧客や取引先等からの著しい迷惑行為や悪質なクレームによって、労働者の就業環境が害される状態を指します。ポイントは、単なる「意見」や「正当な苦情」ではなく、要求の内容や言動の態様が社会通念上相当といえず、現場の業務遂行や心身に影響を与えるレベルに達していることです。

厚生労働省もこの問題を重く見ており、企業が対応方針を整備する必要性が広く認識されつつあります。従来は職場内のパワハラ・セクハラが中心でしたが、現在は「顧客など第三者からのハラスメント」も、企業が対処を求められる領域として注目されるようになりました。

現場で起きている事例は決して軽くありません。例えば、次のようなケースが典型です。

  • 土下座を求めるなど、人格を踏みにじる要求を行う
  • 長時間にわたり暴言や威圧を繰り返し、業務を止める
  • 「SNSに晒す」「悪い口コミを書く」などの言葉で脅し、過剰な対応を引き出そうとする

こうした行為は、従業員のメンタルに深いダメージを与え、休職や退職につながることもあります。
企業側としては、貴重な人材を失うだけでなく、現場の士気やサービス品質にも影響が出ます。
だからこそ、個々の担当者に丸投げせず、組織として対応する体制づくりが求められています。

1-2 なぜ今、自社サイトに「ポリシー」を掲載する企業が増えているのか

では、なぜ対策の一環として「ホームページへの掲載」を選ぶ企業が増えているのでしょうか。
理由を一言でまとめるなら、社外に対して企業の意思を明確に示す必要性が高まっているからです。

これまで、クレーム対応の方針は社内マニュアルとして整備されていても、外部に見える形で提示されないことが多くありました。その場合、現場の担当者が理不尽な要求を受けたとき、次のような状況に陥りがちです。

  • 「断りたいが、個人判断で断ると揉める」
  • 「会社としての根拠がないので押し切られる」
  • 「別の担当者が対応してしまい、前例になってしまう」

ホームページという誰でも見られる場所にポリシーを掲げることで、「当社としては、このような行為は受け入れません」「一定のラインを超えた場合は対応を打ち切ります」というスタンスを事前に示せます。
これにより、対応の場面で個人の判断ではなく会社の方針として説明しやすくなります。

この動きは、大企業だけのものではありません。BtoCのサービス業はもちろん、地域密着型の中小企業でも、採用難や現場負担の増大を背景に、ポリシー掲載を検討するケースが増えています。トラブルを未然に防ぐ「抑止力」として機能させたい、という狙いも実務上は大きいでしょう。

1-3 従業員を守り、企業の社会的信用を高めるためのWeb活用

ホームページにカスハラポリシーを掲載する目的は、「強い顧客を追い払うこと」ではありません。大切なのは、顧客を尊重する姿勢を前提にしつつ、従業員の人権と安全も同じくらい守る、というバランスを示すことです。

採用面で考えると、その効果は分かりやすいかもしれません。求職者は、給与や仕事内容だけでなく、働く環境や会社の姿勢も見ています。

「お客様第一」を掲げるだけの会社よりも、「従業員が安心して働ける環境を守る」と明言している会社の方が、安心感を持たれやすい傾向があります。

また、取引先や一般の顧客に対しても、リスク管理ができている企業、組織として整っている企業という印象につながります。ホームページは集客のためだけでなく、企業のスタンスを伝える場でもあります。ポリシー掲載は、その役割をより“経営寄り”に使う取り組みと言えます。

カスタマーハラスメントリシーとは?作成が必要な理由とメリット

「ポリシーを作ると言っても、何をどう書けばいいのか分からない」「かえってお客様の気分を害するのではないか」と不安に感じる方もいらっしゃると思います。
ただ、適切なポリシーは顧客を遠ざけるためではなく、善良な顧客と良い関係を続けるためにこそ役立ちます。現場が疲弊してサービスが不安定になることこそ、結果として顧客満足度を下げてしまうからです。

ここでは、ポリシーの定義と役割、ホームページで公表するメリット、掲載がない場合に起こり得るリスクを整理します。

2-1 カスタマーハラスメントポリシー(基本方針)の定義と役割

カスタマーハラスメントポリシーとは、企業が顧客対応において「何を大切にし、どこから先は受け入れないか」を言語化した基本方針です。内容は企業によって異なりますが、多くの場合、次の3点を柱に構成されます。

まず、以下のような項目を明文化します。

  • 企業としての顧客対応の理念(どんな姿勢で向き合うか)
  • ハラスメントに該当する行為の考え方(どのような言動が問題か)
  • ハラスメントが発生した場合の対応方針(どう対応するか)

これは法律そのものではありませんが、企業としての「ルール」を示す役割を持ちます。スポーツにルールがあるように、取引やサービスの場にも最低限のルールが必要です。ポリシーは、そのルールを社内外に分かる形で示し、線引きを共有するためのものです。

2-2 ホームページに公表することで得られる3つの大きなメリット

ホームページにポリシーを掲載するメリットは、単に“掲げること”ではなく、実務上の判断がしやすくなる点にあります。特に効果が出やすいポイントは、次の3つです。

現場の判断負担の軽減

まず1つ目は、現場の判断負担の軽減です。担当者が一番困るのは、「どこまで対応すべきか」「どこで打ち切ってよいか」の基準が揃っていない状態です。ポリシーが公開されていると、対応の場面で「当社の方針としてここまでです」と説明しやすくなり、個人が矢面に立つ形を減らせます。

抑止効果

2つ目は、抑止効果です。悪質な要求は、相手が押せば折れると感じたときにエスカレートしやすい面があります。企業として方針を示しておくことは、「これ以上は受け入れない」という境界線を前もって伝えることになり、結果としてトラブルが大きくなりにくい場合があります。

信頼の獲得

3つ目は、信頼の獲得です。「厳しいことを書くとお客様が離れるのでは」と心配されることがありますが、実務的には逆のケースも多いです。理不尽な要求への対応に時間を取られれば、他の顧客対応が遅れ、全体のサービス品質が下がります。従業員を守り、通常業務を安定させることは、善良な顧客にとってもメリットになります。結果として「スタッフを大切にする企業」という評価につながることもあります。

2-3 掲載がない場合に想定される企業リスクと現場の負担

一方で、ポリシーがなく、対応方針が共有されていない場合、現場は属人的な対応になりやすくなります。
「Aさんは断ったが、Bさんは対応した」
このような状態は、顧客側からすると「言えば通る」という学習につながり、クレームが長引く原因にもなります。

また、従業員がカスハラ被害を受けて心身の不調をきたした場合、企業としての対応状況によっては、安全配慮義務との関係が問題となる可能性もあります。少なくとも、「会社として方針がなく、守る仕組みもない」と受け取られれば、従業員の不信感につながり、離職の引き金になることがあります。

ホームページにポリシーがない状態は、「当社には基準がありません」と言い切るものではないにせよ、外部から見たときに姿勢が見えにくい状態です。リスク管理の観点からも、方針の言語化と共有は早めに進めておく方が安全です。

カスタマーハラスメントポリシーの具体的な記載内容と構成要素

カスタマーハラスメントポリシーは、気持ちや理念だけを書いても実務では機能しません。
実際に現場で使えるものにするためには、「何が問題行為なのか」「起きたらどうするのか」「会社としてどう支えるのか」を、一定の具体性をもって示す必要があります。

すでにポリシーを公開している企業の内容を見ると、書き方や表現に違いはあるものの、盛り込まれている要素には共通点があります。ここでは、実務上押さえておきたい構成要素を整理します。

3-1 「ハラスメント行為」の定義と対象範囲を明確にする

まず重要なのが、「どのような行為をカスタマーハラスメントと考えるのか」を明示することです。
「迷惑行為はおやめください」「常識の範囲でお願いします」といった表現だけでは、判断基準が曖昧になり、トラブルの火種を残してしまいます。

実務では、現場で実際に問題になりやすい行為を想定し、一定の具体例を挙げる形がよく使われます。
例えば、暴言や威圧的な言動、長時間の拘束、過剰な補償要求、従業員の人格を否定する発言、無断での撮影や投稿などです。

ここで大切なのは、「すべてを網羅しようとしないこと」と「限定しすぎないこと」のバランスです。
そのため、多くのポリシーでは「以下は例示であり、これらに限られません」という一文を添えています。これにより、想定外のケースにも対応しやすくなります。

3-2 カスハラ発生時の企業の姿勢と対応方針を示す

次に重要なのが、ハラスメントが発生した場合に「企業としてどう対応するのか」を示すことです。
ここが曖昧だと、せっかくポリシーを作っても実効性が弱くなります。

多くの企業では、段階的な対応を想定しています。
例えば、注意・要請、対応の打ち切り、サービス提供の中止、悪質な場合には外部機関への相談や法的対応を検討する、といった流れです。

「お客様をお断りする」「取引を停止する」といった表現に抵抗を感じる方もいるかもしれません。ただし、これはあくまで通常の顧客対応の話ではなく、社会通念上相当といえない行為があった場合に限った措置です。その点が文脈上きちんと伝わる書き方をすれば、過度に強い印象を与える必要はありません。

むしろ、対応方針を明記していない方が、現場では判断に迷い、結果として対応が長引いたり、問題が大きくなったりするリスクがあります。

3-3 社内体制・従業員への配慮を示す

ポリシーは顧客に向けたメッセージであると同時に、従業員に向けたメッセージでもあります。
そのため、社内の体制についても触れておくと、内容に厚みが出ます。

例えば、相談窓口の設置、管理職への共有、研修や周知の実施などです。
「ハラスメントがあった場合は、会社として相談を受け付ける」「一人で抱え込ませない」という姿勢を示すことで、従業員の安心感につながります。

形式的な一文で構いませんが、「会社として守る意思がある」という点を明確にすることが重要です。

【そのまま使える】ホームページ掲載用のカスタマーハラスメントポリシー例文集

ここからは、実際にホームページに掲載することを想定した例文を紹介します。
業種や社風に応じて調整する前提で、そのままベースとして使える構成にしています。

4-1 汎用性の高い基本パターン(企業全般向け)

カスタマーハラスメントに対する基本方針

【会社名】(以下「当社」)は、お客様からのご意見・ご要望に真摯に向き合い、より良い商品・サービスの提供に努めております。
同時に、当社で働く従業員(業務委託先を含む)が、心身ともに安心して業務に取り組める環境を守ることも、企業として重要な責務であると考えています。

近年、顧客対応の現場において、社会通念上相当な範囲を超える言動や要求により、従業員の就業環境が損なわれる事例が見受けられます。
当社は、サービス品質の維持と、すべての関係者が尊重される環境を守るため、以下のとおりカスタマーハラスメントに対する基本方針を定めます。

1.カスタマーハラスメントの定義

当社では、お客様からの言動のうち、要求内容の妥当性および要求を実現するための手段・態様に照らして、社会通念上相当といえないものであり、従業員の就業環境や安全、心身の健康を害するおそれがある行為を「カスタマーハラスメント」と定義します。

正当なご意見・ご指摘や、合理的な範囲でのご要望を否定するものではありませんが、当社として受け入れられない行為については、明確に線引きを行います。

2.カスタマーハラスメントに該当する行為の例

以下は、カスタマーハラスメントに該当すると考えられる行為の一例です。
なお、これらは例示であり、下記に限られるものではありません。

  • 暴言、威嚇、脅迫、強要などの言動
  • 人格否定、侮辱、差別的または性的な言動
  • 性的な言動や、セクシャルハラスメントに該当する行為
  • 大声や高圧的な態度による威圧的な要求
  • 同一内容の要求や問い合わせを執拗に繰り返す行為
  • 長時間にわたる拘束、居座り、業務の妨害
  • 正当な理由のない過度な謝罪要求(例:土下座の要求)
  • 不相当な金銭補償、返金、サービス提供を求める行為
  • 従業員の個人情報を詮索する行為、または個人への直接的な攻撃
  • 無断での撮影・録音、またはSNS等インターネット上への投稿や誹謗中傷
  • 「投稿する」「晒す」などと示唆し、要求を通そうとする行為

これらの行為は、従業員の尊厳を損ない、当社の業務運営や他のお客様へのサービス提供に重大な支障をきたすおそれがあります。

3.カスタマーハラスメントへの対応方針

当社は、カスタマーハラスメントに該当する行為があったと判断した場合、状況に応じて以下の対応を行います。

  • 対応の中止、または当該対応の打ち切り
  • 商品・サービスの提供停止、または今後の取引のお断り

また、行為が悪質であると判断した場合や、従業員の安全が脅かされるおそれがある場合には、警察・弁護士等の関係機関に相談のうえ、法的措置を含めた適切な対応を行うことがあります。

当社は、個々の従業員に判断を委ねるのではなく、組織として一貫した対応を行うことを基本方針としています。

4.従業員への配慮と社内体制

当社は、カスタマーハラスメントから従業員を守るため、以下の取り組みを行います。

  • 相談窓口の設置および社内共有体制の整備
  • カスタマーハラスメントに関する周知・教育の実施
  • 被害を受けた従業員への適切なフォローおよび配慮

従業員が安心して業務に専念できる環境を整えることが、結果としてお客様への安定したサービス提供につながると考えています。

5.お客様へのお願い

当社は、今後もお客様との信頼関係を大切にし、誠実な対応を心がけてまいります。
そのためにも、社会通念上相当な範囲でのご意見・ご要望にご理解とご協力をお願い申し上げます。

 

4-2 BtoC・サービス業向け(具体的な禁止行為を明示する例)

当店では、すべてのお客様に気持ちよくご利用いただくため、またスタッフが安心して業務に取り組めるよう、以下の行為をお断りしています。

お断りしている行為の例

・大声や威圧的な態度による要求
・人格を否定する発言や暴言
・解決困難な要求を繰り返す行為
・スタッフへの身体的接触や不適切な言動
・許可のない撮影、録音、インターネット上への投稿

これらの行為が確認された場合、サービス提供を中止させていただくことがあります。
また、状況によっては外部機関へ相談のうえ、適切に対応いたします。

お客様との信頼関係を大切にするためにも、相互の尊重にご理解とご協力をお願いいたします。

4-3 ホームページ内の掲載場所について

作成したポリシーは、閲覧しやすい場所に掲載することが重要です。
実務上、よく選ばれているのは次のような場所です。

まず、フッターへのリンク設置です。すべてのページからアクセスできるため、最も一般的で分かりやすい方法です。
次に、会社概要や企業情報ページ内への記載です。コンプライアンス方針の一部として掲載するケースもあります。
また、お問い合わせページにリンクを設け、送信前に確認を促す形も、実務上の抑止効果が期待できます。

まとめ|従業員と会社を守るためにホームページで姿勢を示す

カスタマーハラスメントポリシーの掲載は、「厳しい会社だと思われるためのもの」ではありません。
顧客を尊重する姿勢を前提にしながら、従業員の安全と尊厳も同じように守るという、企業としてのスタンスを示すものです。

現場任せの対応を続ければ、負担は蓄積し、やがてサービス品質や人材定着に影響が出ます。
一方で、方針を明確にし、ホームページを通じて社外にも示すことで、トラブルを未然に防ぎ、社内の判断基準を揃えることができます。

ポリシーの整備は、特別な企業だけの取り組みではありません。
規模に関わらず、従業員を守り、安定した経営を続けるための現実的な一歩として、是非ご検討ください。

参考

政府広報オンライン
「カスハラとは?法改正により義務化されるカスハラ対策の内容やカスハラ加害者とならないためのポイントをご紹介」https://www.gov-online.go.jp/article/202510/entry-9370.html

厚生労働省
「業種別カスタマーハラスメント対策企業マニュアル (スーパーマーケット業編)等を作成しました。」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_55395.html

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