オウンドメディアを企業が持つ目的や運用について

オウンドメディアは、企業が持つ商品を「売り込む」という方法ではなく、「情報発信する」ことを目的としています。今回はそんなオウンドメディアについて、その役割や事例、立ち上げ方についてご紹介します。

オウンドメディアの役割

オウンドメディアは、企業が広く情報発信するツールとしてWEBサイトやカタログ、広報誌などを総称して呼んでいます。インターネットと関連のあるWEBサイト以外のメディアも含んでいます。

以前こちらのコラムで、ホームページの種類の1つとしてオウンドメディアを紹介しました。コラムの中では「企業が取組むメリット」や「2つの運用方法」をご説明しましたが、これらは何のために制作して発信しているのでしょうか。その役割をまずは考えていきます。

顧客との接点を作ること

オウンドメディアは「誰か」に見てもらうために制作しています。「誰か」とは企業でいうと、既存のクライアントや今後取引のあるかもしれない顧客になります。

例えば広報誌を発行している企業は、自社で開発した製品を掲載することで、既存顧客に最近の会社の動きを伝えることができたり、新しい取引につなげられるかもしれません。

またDIYの豆知識を発信しているWEBサイトであれば、家具の作り方を通して工具の紹介をすることで、ECサイトへの誘導や販売数増加を視野に入れられます。

このようにオウンドメディアがあると、自然に顧客との接点を作ることができるのです。

ブランディング

オウンドメディアで情報を発信するのであれば、出来るだけ誰かの役に立つ情報であるとユーザーに喜ばれます。オウンドメディアを持っている企業はたくさんありますので、新しい情報の発信やオリジナリティのある内容が公開されていると、そのメディアに対する好感度もあがります。

様々なユーザーが持つ問題や悩みを解決してくれるようなメディアであれば、運営している会社や他のサービスにも興味を持ち、企業の価値向上などブランディングにも貢献出来るのではないでしょうか。

オウンドメディアの事例

オウンドメディアは、業種や運営する事業規模によって、目的やターゲット層が異なります。どういった業種がどのようなメディアを運営しているのか、業種別にご説明します。

医療・健康

医療・健康の分野に関しては、年齢や性別を問わず多くの人が関心を寄せるカテゴリではないでしょうか。オウンドメディアを運営している会社は、製薬会社やクリニックが多いですが、介護系の会社もあります。

製薬会社の発信内容について

ターゲット層を子育て世代、働く男性、若者向けなど絞ることによって、特化した情報を発信することができます。
子育て世代向けに、子どもがよくかかる病気やケガの情報をまとめて、その対処法まで書かれていると、子どもを持つ親からの関心や信頼を得られるメディアとなります。

また働く男性向けに、特有の悩みである体臭や抜け毛についての情報発信や、がん治療や認知症のことについてのオウンドメディアもあります。どれもユーザーの悩みに寄り添い、丁寧な情報発信をすることがブランディングにつながりやすいと考えられています。

クリニックが発信するメディア

クリニックなどが発信している内容は、それぞれが持つ専門性の高い情報が特徴です。デンタルクリニックであれば、歯の健康に役立つ情報で、虫歯や歯周病の予防、ホワイトニングなどを詳しく説明しています。

実際に存在するクリニックの医師が専門的な情報を発信することで、ブランディングにつながったり、クリニックを利用する方を増やすことにも可能となっています。

住宅・不動産

住まい全般を扱っている大手の住宅メーカーから、注文住宅やリノベーションなどに特化した会社まで、色々な分野の会社が住宅・不動産メディアを持っています。

そんなメディアが発信する情報も様々です。例えば以下のようなコンテンツがあります。

・不動産購入を考えている人向けに、住宅市場や住宅ローン、お金の法律のことなどを分かりやすく説明
・失敗しない賢い家づくりの情報を発信
・これから賃貸住宅での暮らしを考えている人向けに、防犯・セキュリティや、お部屋のトラブルなどを情報提供

それぞれのメディアがユーザーの役に立つ情報を発信していることが分かります。またWEBサイトの中には、自社サービスの資料をダウンロードできたり、サービス誘導につなげる工夫もされています。

製造業

製造業のオウンドメディアは、一般消費者向けの内容と、専門性に特化している内容と分かれています。

一般消費者向けには、例えば工具の使い方などの情報提供をしているメディアがあります。最近ではDIYや日曜大工などをする人が増えてきているので、それに関わる工具を扱う会社がメディアを持っています。

BtoBでは、認知してもらうためにオウンドメディアを使ってそれぞれ工夫した内容を発信しています。
例えば、特殊な素材を扱っている会社であれば、それらが身近でどんなところに使われているのか教えてくれる情報であったり、工事従事者に向けて様々な導入事例を教えてくれるメディアもあります。

IT系

IT系で多くみられるのは、私たちWEB制作会社やWEBマーケティング会社などが発信するWEB系のコンテンツのオウンドメディアです。WEBを運用している担当者に向けて、WEBマーケティングやSEOの知識を発信しています。

また最近よく耳にするIoTやフィンテックなどの最新技術についての情報提供や事例の紹介をしているオウンドメディアもあります。企業問題を解決するようなテーマや、コンテンツに外部のジャーナリストや専門家が登場する場合もあります。

その他

これまで挙げた分野以外にも、様々な面白いテーマのオウンドメディアは存在します。美容分野やカルチャー、飲食など成功しているオウンドメディアは数多くあるため、立ち上げる前には実際にどのようなオウンドメディアがあるのか調べてみてください。

オウンドメディアの立ち上げ方

企業でオウンドメディアを立ち上げる際には、どのようなフローで行うのでしょうか。オウンドメディアとしてWEBサイトやブログを立ち上げると決まった場合、どのような手順で進めていくのか説明します。

メディアの目的を決める

初めの段階でオウンドメディアの目的を整理しておくと、発信内容やWEBサイトを考える際に、軸がブレずに進めることができるため、立ち上げの最初のフェーズで目的を決定します。

目的の具体例としては、見込み客を増やす、ECサイトの販売数増加、企業のブランディングなどがあります。

目的が決まれば次に目標数値や戦略設計を考えます。オウンドメディアは広告で短期的にアクセスを増やす方法ではなく、質の良いコンテンツを発信し、自然検索やSNSを使って中長期的に見込みユーザーを獲得していき、目的達成を目指しています。

コンテンツを作る

オウンドメディアで一番重要なコンテンツ制作では「質」が重要視されています。外注して安く大量にコンテンツを仕入れることもできますが、オウンドメディアの中長期的計画や、ブランディングなどを考えたときには、一つ一つオリジナルでターゲット層に届くコンテンツを作ることが理想です。

コンテンツを作るときにはまず「テーマ」を決めます。オウンドメディアとして大きなテーマやターゲットはありますが、コンテンツ一つ一つを作る際にも意識します。
テーマは1つのコンテンツに対して1つ設けて、カスタマージャーニーマップでいうとどこに当てはまるのかなど、チームで共有しながら進めていきます。

運用について

オウンドメディアは立ち上げまでが大変と思われがちですが、立ち上げた後もコンテンツの質を維持しながら継続的に運用していくことも重要です。そのため社内の体制づくりが鍵となっています。

運用では、進行管理、ライター、WEBデザイン、校正チェック、効果検証などを行う人材が必要です。兼任することは出来ますが、負担が偏るとコンテンツ制作が難しくなり、運用ができなくなります。

出来るだけ作業を分担して、社内だけで難しい部分は外部委託するなど、体制を整えてから運用をスタートできると継続した運用が期待できます。

まとめ

オウンドメディアを企業が持つ目的としては、顧客との接点を作ることやブランディングがあります。自然な形でメディアを通じてユーザーに役立つコンテンツを提供できると、目的を達成することができます。

また業種別のオウンドメディアのコンテンツ例としては、例えば医療系の分野であれば、高い専門性を活かして、独自のコンテンツを展開することができます。誰にでも発信できるコンテンツではないため、ユーザーの信頼も獲得しやすいといえます。

住宅系のオウンドメディアは「住まい」や「暮らし」のことに関して様々なコンテンツがあります。「家を売りたい」「家を買いたい」といった大きなテーマから、「整理整頓」や「セキュリティ」など小さいことですが、生活には重要なテーマがあります。

これからオウンドメディアを立ち上げるには、様々な分野の事例がある中で、継続できる自社にしか発信できないコンテンツを見つけることが大切です。そして立ち上げ後の運用については、作業を分担した体制づくりで継続した運用ができるようにしましょう。