プライバシーポリシー(個人情報保護方針)はホームページに必要?不要?
「うちのホームページにプライバシーポリシーは本当に必要なのか」「個人情報は扱っていないから関係ないのでは」―― 中小企業の経営者やご担当者からよくいただくご質問です。確かに法律用語が多く、専門的に感じられる分野です。
結論としては、原則として用意しておくことを強くおすすめします。個人情報保護法は、情報の「利用目的の特定・公表」や「安全管理」などを事業者に求めています。これらをわかりやすく示す手段として、ウェブサイト上にプライバシーポリシーを掲載するのが最も実務的です。さらに、アクセス解析や広告タグを使う場合は、他の法令・各サービスの規約への対応の観点からもページ整備が欠かせません。
以下では、必要かどうかの判断基準、作り方、運用時の注意点を解説します。
目次
【結論】多くのホームページで「実務上は必要」と考えるのが安心
1-1:個人情報保護法の現状|小規模事業者の除外は2017年に撤廃
現在は事業の規模に関係なく、個人情報保護法の対象になります。 かつては「保有する個人情報データベース等が5,000件以下なら適用外」という要件がありましたが、2017年の改正個人情報保護法で小規模事業者除外の撤廃が決定され、経過措置を経て2022年4月から全事業者が完全に対象となりました。したがって、「うちは小さい会社だから関係ない」という考え方はあまりよろしくありません。
個人情報保護法が求める主な対応は次のとおりです。
- 利用目的の特定・公表(何のために使うのかを示す)
- 適正な取得・利用(必要な範囲で集め、目的外利用をしない)
- 安全管理措置(漏えい等を防ぐための管理)
- 第三者提供の管理(同意や記録の保存 等)
- 本人からの開示・訂正・削除等への対応
これらを明らかにするため、プライバシーポリシーとしてまとめて公開しておくのが最も分かりやすい方法です。
1-2:「個人情報を取得していない」は本当?見落としがちな収集ポイント
「お問い合わせフォームが少しあるだけ」と思っていても、実際にはサイト運営の各種ツール経由で情報を取得・外部送信しているケースが多く見られます。
明らかに個人情報を取得している例
- お問い合わせ・資料請求・見積り・応募などのフォーム(氏名、メール、電話、住所 など)
- 会員登録、予約、EC購入情報 など
見落としがちな情報の取得・送信
- アクセス解析(例:Google アナリティクス):Cookieやアクセス履歴などの利用者情報
- reCAPTCHA(迷惑送信対策):ブラウザ情報や操作履歴等を判定に使用
- SNSプラグイン:閲覧状況がSNS事業者に通知される場合がある
- 広告タグ(Google 広告、Yahoo!広告、Meta Pixel 等):広告効果測定のための追跡
- チャットボット・問い合わせツール:会話内容やアクセス情報の外部処理
これらは「個人情報」そのものとは限りませんが、Cookie等の「個人関連情報」として扱いが求められるものが含まれます。いずれにしても、何を集め、何のために使い、どこへ送るのかを説明しておくことが重要です。
1-3:ページを用意しない3つのリスク
行政対応・法令違反のリスク
- 委員会(個人情報保護委員会)からの報告徴収、指導・勧告、命令の対象になり得ます。
- 命令違反等には罰則(個人は懲役または罰金、法人は罰金)も定められています。
顧客からの不信感
- 「情報の扱いが不明確」と見なされやすく、問い合わせや購入をためらわれます。
ビジネス機会の損失
- 大手企業との取引や審査で、プライバシーポリシー整備が前提とされることが増えています。
- 各サービスの利用規約(例:Google アナリティクス、広告配信)でも、サイト上での説明や開示を求めています。
当社のホームページは必要?業種・機能別の判断基準
2-1:ホームページにこの機能が入っていれば実質必須と考えるべき
次のいずれかに該当すれば、プライバシーポリシーの整備を前提に考えるのが現実的です。
- フォーム機能
お問い合わせ、資料請求、見積り、応募、予約等 - 会員・登録機能
会員登録、メルマガ、マイページ等 - EC・決済
オンライン販売、サブスク、寄付等 - 解析・広告
Google アナリティクス、広告タグ、ヒートマップ等 - 外部サービス埋め込み
SNSログイン、reCAPTCHA、地図、YouTube など
2-2:業種別に注意したいポイント
- 医療機関
症状や診療情報などの要配慮個人情報を扱うため、取得・同意・安全管理を丁寧に記載。オンライン診療や画像・音声の扱いも明示。 - 士業(弁護士・税理士・司法書士 等)
相談内容は秘匿性が高く、守秘義務との整合に留意。 - ECサイト
決済情報、配送、購入履歴の扱い、委託先(決済・配送)への提供範囲を具体化。 - 人材関連
履歴書や適性検査結果などの詳細情報、**第三者提供(紹介先企業)**の説明を明確に。
2-3:「不要」と判断できるのはごく稀なケース
- 完全な静的サイトで、フォーム・解析・SNS・Cookie・広告タグ等を一切使わない場合に限り得ます。
- ただし、将来の機能追加に備え、最初から用意しておくほうが安全です。
プライバシーポリシーに記載する項目とそのまま使える文例
3-1:プライバシーポリシーの基本構成(10項目)
以下の10項目を基本に、自社の実態に合わせて調整します。例文は置き換え漏れに注意してご利用ください。
1. 運営者情報
■運営者情報
事業者名:株式会社〇〇〇〇
所在地:〒000-0000 〇〇県〇〇市〇〇町0-0-0
代表者:代表取締役 〇〇 〇〇
連絡先:TEL 00-0000-0000 / Email privacy@example.com
2. 取得する情報の種類(個人情報・個人関連情報)
■取得する情報
- フォーム入力情報:氏名、メールアドレス、電話番号、住所 等
- Cookie等の利用者情報:アクセス履歴、ブラウザ情報、IPアドレス 等
- アクセスログ:訪問日時、参照元サイト、利用端末情報 等
3. 利用目的
■利用目的
- お問い合わせへの回答、資料送付等の事務連絡
- サービス・商品のご案内(希望者に限る)
- サイトの利用状況の分析と改善
- 統計データの作成(個人を特定しない形式)
4. 第三者提供
■第三者提供
当社は、次の場合を除き、個人情報を第三者に提供しません。
- ご本人の同意がある場合
- 法令に基づく場合
- 人命・財産の保護等で同意取得が難しい場合
- 配送等の業務委託に伴う提供(住所・氏名・電話番号 等)
5. 委託
■業務委託
当社は、次の委託先に個人情報の取扱いを委託する場合があります。
- サーバー運営会社(データ保管・管理)
- メール配信サービス(メルマガ配信)
- 決済代行会社(決済処理)
※委託先には守秘義務・安全管理に関する契約等により適切に監督します。
6. 外部送信(Cookie等・解析/広告ツール)
■外部送信について
当サイトでは、サービス向上等のため、次の外部サービスを利用します。
- Google アナリティクス:サイト利用状況の分析
- reCAPTCHA:迷惑送信の判定
- 広告配信サービス(Google 広告、Yahoo!広告、Meta 等):効果測定 ほか
送信される情報の内容・送信先・目的は、各サービスのポリシーをご確認ください。
7. 安全管理措置
■安全管理措置
- 技術的対策:SSL、アクセス制御、脆弱性対策 等
- 組織的対策:責任者の設置、社内ルール整備、教育
- 人的対策:守秘義務、権限管理、退職時の権限剥奪
- 物理的対策:入退室管理、施錠、媒体の盗難・紛失防止
8. 開示等の請求(利用目的通知/開示/訂正/削除 等)
■開示等のご請求について
当社は、お客様ご本人からの「利用目的の通知」「個人情報の開示」「内容の訂正・追加・削除」「利用停止・消去」「第三者提供の停止」などのご請求に、個人情報保護法に基づき誠実に対応いたします。
ご請求の際は、下記の手順によりお申し出ください。
- 下記の窓口まで、電子メールまたは郵送でご連絡ください。
- 所定の申請書式をお送りしますので、必要事項を記入の上、本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)の写しを添付してご返送ください。
- 内容を確認のうえ、原則として30日以内に書面または電子メールでご回答いたします。
※「開示」または「利用目的の通知」については、1件につき1,000円(郵送料を含む)の手数料を申し受ける場合があります。
※正当な理由により対応が難しい場合には、その理由を明確にご説明いたします。
9. 苦情・相談窓口
■個人情報に関するお問い合わせ・苦情・相談窓口
当社が保有する個人情報の取扱いに関するお問い合わせや苦情・ご相談は、下記窓口までご連絡ください。
【窓口】株式会社〇〇〇〇 個人情報保護担当
〒000-0000 〇〇県〇〇市〇〇町0-0-0
TEL:00-0000-0000(受付時間:平日9:00~17:00)
Email:privacy@example.com
いただいたご相談・苦情には速やかに対応し、適切な解決を図るよう努めます。
10. 改定(変更時の告知方法・適用日)
■プライバシーポリシーの改定について
当社は、法令の改正やサービス内容の変更等に応じて、本プライバシーポリシーを改定することがあります。
重要な変更を行う場合は、当サイト上での告知、またはお客様への個別通知によりお知らせいたします。
改定後のプライバシーポリシーは、当サイトに掲載した時点から効力を生じるものとします。
制定日:2025年○月○日
最終更新日:2025年○月○日
3-2:Google アナリティクス・reCAPTCHAを使う場合の追記例
Google アナリティクス(GA4)
■Google アナリティクスの利用
当サイトは、利用状況の把握と改善のため Google アナリティクスを利用します。
取得される情報には、Cookie等による識別子、閲覧ページ、滞在時間、利用環境 等が含まれます。
収集データは Google LLC に送信され、同社のプライバシーポリシーに従って管理されます。
Google アナリティクスの無効化は、Google 提供のオプトアウト アドオンで設定できます。
reCAPTCHA
■reCAPTCHA の利用
当サイトは、迷惑送信対策のため Google の reCAPTCHA を利用します。
ブラウザ情報や操作状況、IPアドレス等が判定に用いられ、Google に送信されます。
詳細は Google のプライバシーポリシーおよび利用規約をご確認ください。
※電気通信事業法の外部送信規律(2023年6月16日施行)により、Cookie等で外部に送る情報の内容・送信先・目的の「通知または公表」(ケースにより同意取得)が必要になる場面があります。プライバシーポリシーやバナーでの案内を併用し、実態に合わせて整備してください。
3-3:医療機関向けの追加記載(要配慮個人情報)
要配慮個人情報(健康・診療情報 等)を扱うため、取得・利用目的、同意の取り方、安全管理をより具体的に記します。
■要配慮個人情報の取扱い
【取得する情報】症状、既往歴、検査結果、診断名、処方 等
【取得方法】問診票、診察・検査、紹介状 等
【利用目的】診療・治療・医療安全の確保、品質向上(匿名化した教育利用を含む)
【同意】初診時の申込書等により明示的な同意をいただきます。
ページの設置・運用・更新のポイント
4-1:見つけやすい設置場所と表示方法
- フッターに常時リンク(全ページから到達できること)
- フォームの送信前(リンクの明示、同意チェックの設置)
- 会員登録や購入手続きの直前(重要事項として再提示)
- サイトマップ、会社概要にもリンクを置くと親切です。
4-2:更新が必要になる典型タイミング
- 新ツールの導入
解析、広告、チャット、予約 等 - フォーム追加・設問変更
収集する情報の種類や目的に変更が出る場合 - 委託先や提供先の変更
決済代行や配送業者の切替え など - 事業・組織の変更
新サービス開始、会社名・所在地変更 等 - 法令・ガイドラインの改正
少なくとも年1回は見直し
4-3:開示請求・苦情対応の準備
- 窓口の明記(担当部署・電話・メール・受付時間・所在地)
- 本人確認方法(運転免許証等の写し、住民票 等)
- 目安の回答期限(例:開示・訂正は原則30日以内)
- 手数料の有無(開示に限り実費相当等)
よくある間違いと「困った時」の対処法
5-1:作成時に多い5つのミス
- テンプレートの置き換え漏れ
社名・住所・サービス名を実態に合わせて修正。 - 実態と不一致
実際に入っているタグやツールを開発者ツールで確認。 - 曖昧な表現
「適切に管理」だけでなく、どの対策を取るかを具体化。 - 連絡先不明
担当部署・責任者・連絡方法を明示。 - 更新日なし
「制定日」「最終更新日」を記載。
5-2:判断が難しいグレーゾーン
- 名刺のメルマガ利用
入手時の説明、同意取得、停止手段の案内をセットに。 - 既存顧客への案内
契約・約款の範囲内か、関連性が高い内容かを確認。 - 採用応募書類:
保管期間の明確化、不採用時の返却・廃棄ルールを事前に定める。
5-3:専門家への相談
- 行政書士
初回整備・一般的な企業サイトのひな形整備。 - 弁護士
医療・金融・越境(GDPR 等)・事故対応・大規模データ。 - 公的窓口
個人情報保護委員会の相談窓口・資料を活用(無料)。
まとめ
- 2017年の改正個人情報保護法で撤廃が決定され、2022年4月から完全に適用。規模にかかわらず法対応が必要。
- プライバシーポリシーのページ設置そのものが法律で一律義務化されているわけではないものの、 利用目的の公表、外部送信に関する通知・公表(場合により同意)、各サービス規約への対応として、実務上は整備が必須に近い。
- ツール導入や事業変更の都度、内容を見直し、わかりやすく更新する。
- 迷ったら、専門家や公的窓口に相談する。
本稿をたたき台に、自社の実態に合わせて文言を調整し、安心して運用できる体制を整えてください。

