ホームページ制作するなら最初に考えるべき運用リスクとは
目次
ホームページ制作で多くの方が見落とす「制作後」のリスク
ホームページ制作を検討される方が最も気になるのは、やはり制作費用ではないでしょうか。確かに制作費は重要な投資判断材料ですが、実は制作後の運用リスクを見落とすことで、より大きな損失を被る可能性があることをご存知でしょうか。この章では、多くの方が陥りがちな落とし穴について詳しく解説いたします。
制作費「だけ」に注目し失敗する典型パターン
ホームページ制作を検討する際、多くの方が「とにかく制作費を抑えたい」という思いから、制作費だけに注目してしまうケースが非常に多く見受けられます。しかし、この考え方こそが最大の落とし穴となってしまうのです。
例えば、製造業を営む田中さん(仮名)は、50万円の制作費でホームページを作成しました。制作時には「これで新規顧客獲得につながる」と期待に胸を膨らませていたのですが、制作から半年後、サイトが突然表示されなくなってしまったのです。調査の結果、WordPress(ワードプレス:ホームページを簡単に作成・管理できるシステム)のセキュリティアップデートを怠ったことが原因で、サイトが乗っ取られてしまっていたことが判明しました。
復旧作業には80万円の費用がかかり、さらに1ヶ月間サイトが停止したことで、新規問い合わせが完全にストップしてしまいました。「制作費50万円を節約しようとして、結果的に130万円以上の損失を被った」というのが、制作費だけに注目した典型的な失敗パターンです。
このような事態を避けるためには、制作費と運用費をセットで考える必要があります。ホームページは「作って終わり」ではなく、適切な保守管理を継続することで初めて安全で効果的な運用が可能になるのです。
「作って終わり」が招く8つの危険な落とし穴
ホームページを制作した後、適切な運用管理を行わないことで発生する主要なリスクは以下の8つです。これらのリスクは、どれも経営に深刻な影響を与える可能性があります。
1. セキュリティ脆弱性の放置
WordPressなどのCMS(コンテンツ管理システム:ホームページの内容を簡単に編集できる仕組み)は定期的にセキュリティアップデートがリリースされます。これを怠ると、悪意ある攻撃者に狙われやすくなってしまいます。
2. バックアップデータの未整備
万が一の際にサイトを復旧するためのバックアップを取っていないと、データ消失時に一から作り直すことになってしまいます。
3. 古い情報の放置
会社情報や製品情報が古いままだと、顧客に不信感を与えてしまい、ビジネスチャンスを逃すことになります。
4. スマートフォン対応の遅れ
現在、ホームページへのアクセスの約70%がスマートフォンからです。スマホ対応が不十分だと、多くの潜在顧客を逃してしまいます。
5.検索エンジン対策の停滞
SEO(検索エンジン最適化)は継続的な対策が必要です。放置すると検索順位が下がり、集客力が大幅に低下します。
6. サーバートラブルへの対応不備
サーバーの不具合やドメインの更新忘れなど、技術的なトラブルに迅速に対応できない体制だと、ビジネス機会の損失につながります。
7. 法的リスクへの対応遅れ
個人情報保護法の改正など、法的要件の変化に対応できていないと、コンプライアンス上の問題が発生する可能性があります。
8. 競合他社との差別化の停滞
継続的な改善を行わないと、競合他社に遅れを取り、市場での競争力を失ってしまう恐れがあります。
これらのリスクを回避するためには、制作段階から運用体制を整備しておくことが不可欠です。
実際に起きる可能性があるトラブル事例
適切な保守管理を怠ることで、以下のようなトラブルが発生する可能性があります。これらは決して他人事ではなく、どの企業にも起こり得るリスクです。
セキュリティアップデート放置によるリスク
WordPressなどのCMSのセキュリティアップデートを放置すると、サイトが乗っ取られ、悪意あるコンテンツが表示される危険があります。発覚が遅れると検索エンジンからの除外措置を受け、長期間にわたって新規顧客獲得に影響が出る可能性があります。
バックアップ不備による致命的な損失
サーバーの故障時にバックアップが取れていないと、サイトの完全復旧が不可能になる場合があります。新しいサイトの制作費用に加え、データ復旧作業にも多額の費用が発生します。
システムアップデート時の互換性問題
WordPress本体や使用しているプラグインの互換性問題により、サイト表示が崩れることがあります。専門知識なしに対応すると問題が長期化し、問い合わせフォームなどの重要機能に影響が出る恐れがあります。
IPAの調査によると、実際にサイバーインシデント※を経験した企業では、被害額の平均が73万円、復旧期間の平均が5.8日という結果が出ています。適切な保守管理体制があれば、これらのリスクは大幅に軽減できます。
※サイバーインシデントとは
サイバーインシデントとは、サイバー攻撃や技術的問題によりコンピューターシステムに被害が発生した事象のこと。ウイルス感染、不正アクセス、情報漏洩、ランサムウェアによるシステム停止などが該当します。企業の経営に深刻な損害をもたらす重大なリスクです。
※出典:IPA「2024年度中小企業等実態調査結果」(2025年2月14日公開)
制作前に把握すべき運用リスクの具体的損失

ホームページ制作を検討される際、制作費以外にも運用に関わる様々なリスクがあることを事前に把握しておくことが重要です。これらのリスクを軽視すると、予想外の大きな損失を被る可能性があります。ここでは、実際に発生し得る損失の具体例をご紹介いたします。
サイト乗っ取りによる売上機会の喪失と復旧費用の現実
実際に発生し得る損失(IPAデータより)
IPA(情報処理推進機構)は、日本政府が設立した独立行政法人で、情報処理技術の普及とセキュリティ対策の推進を担う専門機関です。同機関が2025年2月に公開した「2024年度中小企業等実態調査結果」によると、以下のような実態が明らかになっています:
直接的な被害額
- サイバーインシデント被害額の平均:73万円
- 100万円以上の被害を受けた企業:9.4%(最大で1億円の被害事例も)
- 復旧までに要した期間の平均:5.8日
- 50日以上の復旧期間を要した企業:2.1%(最大360日)
被害の具体的内容(サイバーインシデント被害企業における被害内容)
- データの破壊:35.7%
- 個人情報の漏えい:35.1%
※出典:IPA「2024年度中小企業等実態調査結果」(2025年2月14日公開)
これらの数字は、適切なセキュリティ対策を行わないことで発生する現実的なリスクを示しています。
このようなリスクを回避するためには、WordPress等のCMSを使用する場合、定期的なセキュリティアップデートとプロによる監視体制が不可欠です。適切な保守管理サービスを利用することで、これらのリスクから会社を守ることができるのです。
顧客データ流出がもたらす信頼失墜コストの実例
ホームページに問い合わせフォームを設置している企業にとって、顧客の個人情報保護は最重要課題の一つです。適切なセキュリティ対策を行わずにデータ流出が発生した場合、法的責任だけでなく、社会的信用の失墜という取り返しのつかない損失を被る可能性があります。
データ流出時の一般的な対応コスト
個人情報保護委員会への報告、顧客への謝罪、システムの再構築、法的対応など、データ流出事故への対応には多額の費用が発生します。さらに、一度失った信頼を回復することの困難さが最も深刻な問題となります。インターネット上に残る事故の記録は簡単には消えず、新規顧客獲得にも長期的な影響を与え続けます。
法的責任の厳格化
個人情報保護法の改正により、データ流出時の報告義務も厳格化されています。適切な保守管理体制を整備することで、このような致命的なリスクから会社を守ることができるのです。
「月5,000円の節約が年100万円の損害を招く」運用費の考え方
多くの方が「月々の運用費はできるだけ抑えたい」とお考えになるのは当然のことです。しかし、保守管理費用を過度に削減することで、結果的に大きな損失を招くケースが後を絶ちません。
投資と損失の比較
適切な保守管理サービスの年間費用と、実際にサイバー攻撃を受けた場合の被害額には大きな差があります。IPAの調査によると、実際にサイバー攻撃を受けた場合の被害額は平均73万円、10社に1社は100万円以上の被害を受けています。
保守管理の重要性
- 平均被害額:73万円
- 高額被害(100万円以上):9.4%の確率
- 復旧期間:平均5.8日(最大360日の事例も)
※出典:IPA「2024年度中小企業等実態調査結果」(2025年2月14日公開)
制作会社選定で必須のセキュリティチェックポイント

ホームページ制作会社を選ぶ際、デザインや価格だけでなく、セキュリティ面での対応力も重要な判断基準となります。適切なセキュリティ対策を講じてくれる制作会社を選ぶことで、制作後の運用リスクを大幅に軽減することが可能です。ここでは、制作会社選定時に必ずチェックすべきポイントをご紹介いたします。
WordPress等のCMS(コンテンツ管理システム)利用時の運用リスク
WordPress(ワードプレス)は世界で最も多く使われているCMS(コンテンツ管理システム)で、ホームページの内容を簡単に更新できる便利なシステムです。しかし、その普及率の高さゆえに、悪意ある攻撃者にとっても格好のターゲットとなってしまっています。
WordPressを狙った攻撃の現状
WordPressは世界で最も多く使われているCMSであるため、その普及率の高さゆえに攻撃者にとって魅力的なターゲットとなっています。一般的に、WordPressに関連する脆弱性の多くは、WordPress本体よりもプラグインやテーマに起因することが知られており、これらの追加機能やデザインファイルが主要な攻撃経路となっています。
WordPress を使用したホームページには、以下のような特有のリスクがあります:
1. プラグインの脆弱性
WordPress には様々な追加機能(プラグイン)がありますが、これらのプラグインに脆弱性があると、サイト全体が危険にさらされます。特に、長期間アップデートされていないプラグインは高いリスクを持っています。
2. テーマの セキュリティ問題
サイトのデザインを決める「テーマ」にもセキュリティ上の問題が含まれている場合があります。無料テーマや出所不明なテーマには特に注意が必要です。
3. 管理者権限の不適切な設定
WordPressの管理者権限が適切に設定されていないと、不正アクセスのリスクが高まります。パスワードの強度や二段階認証の設定なども重要な要素です。
4. データベースの セキュリティ
WordPress はデータベースを使用してコンテンツを管理しているため、データベース自体のセキュリティ対策も不可欠です。
これらのリスクを理解せずに WordPress を使用することは、鍵をかけずに家を建てるようなものです。制作会社を選ぶ際は、これらのリスクに対する具体的な対策方法を明確に説明できるかどうかを確認することが重要です。
弊社では、以下のような対策を提供しています
- 定期的なWordPress本体・プラグイン・テーマのアップデート
- セキュリティプラグインの導入と設定
- 強固なパスワード設定と二段階認証の実装
- 定期的なセキュリティスキャンの実施
- バックアップの定期取得
契約前に確認すべき運用サポート範囲
ホームページ制作の契約を結ぶ前に、運用サポートの範囲を明確にしておくことは非常に重要です。曖昧な契約内容のままスタートすると、後々トラブルの原因となってしまいます。
基本保守サービスの範囲
- WordPress本体のアップデート作業
- プラグインのアップデート作業
- テーマのアップデート作業
- セキュリティ監視の頻度と範囲
- バックアップの取得頻度と保存期間
- 緊急時の対応時間と連絡方法
サイト修正・更新作業の範囲
「テキスト修正は月に何回まで無料で対応してもらえるのか」「画像の差し替えは含まれているのか」「新しいページの追加は別料金なのか」など、具体的な作業内容と回数制限を確認しておくことが重要です。
緊急時の対応体制
サイトがダウンした場合やセキュリティ事故が発生した場合の連絡方法、対応時間、追加費用の有無について明確にしておきましょう。
操作サポートの範囲
WordPress の操作方法がわからない場合のサポート体制についても確認が必要です。電話サポートなのか、メールサポートなのか、リモート操作による支援は可能なのかなど、具体的なサポート方法を把握しておきましょう。
運用費を予算に組み込む賢い投資計画
ホームページ制作を成功させるためには、制作費だけでなく運用費も含めた総合的な予算計画が欠かせません。多くの方が制作費にばかり注目しがちですが、長期的な視点で見ると、運用費の方が重要な投資となる場合も少なくありません。ここでは、賢い投資計画の立て方をご紹介いたします。
段階的な保守管理体制の構築方法
ホームページの保守管理は、事業規模やサイトの重要度に応じて段階的に体制を構築することが可能です。無理のない範囲から始めて、必要に応じてサービスレベルを向上させていく方法をご紹介いたします。
初期段階
ホームページを新しく制作したばかりの企業や、基本的なリスク対策から始めたい場合は、まずは最低限の保守管理から開始することをおすすめします。サーバートラブルやドメイン更新忘れなどの基本的なリスクから会社を守ることが重要です。
発展段階
ホームページからの集客効果を実感し始めたら、より安定した運用体制を検討しましょう。WordPressを使用している企業には、定期的なアップデートとセキュリティ対策が不可欠です。
成長段階
ホームページが事業の重要な柱となったら、より積極的な運用改善を求める体制を構築します。24時間監視体制や定期的な運用レポートなど、プロアクティブなサポートが有効です。
重要なのは、ホームページの事業における重要度に応じて適切なレベルの保守管理を選択することです。事業の成長とともに、保守管理体制も段階的に強化していくことをおすすめします。
や、保守管理の重要性を軽視している会社は避けるべきでしょう。
運用まで見据えたホームページ制作の成功法則

真に成功するホームページとは、制作時だけでなく、運用開始後も継続的に成果を上げ続けるサイトのことです。そのためには、制作段階から運用を意識した設計と戦略が必要になります。ここでは、長期的な成功を実現するための重要な要素について詳しく解説いたします。
競合に差をつける継続的な改善戦略
ホームページは「作って終わり」ではありません。継続的な改善を行うことで、競合他社との差別化を図り、長期的な競争優位性を確保することができます。
データに基づく継続改善のサイクル
効果的なホームページ運用には、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)の実践が不可欠です:
Plan(計画)
Google Analyticsなどのアクセス解析データを基に、具体的な改善目標を設定します:
- 月間訪問者数の10%向上
- 問い合わせ数の20%増加
- 特定ページの離脱率30%削減
Do(実行)
設定した目標を達成するための具体的な施策を実行します:
- コンテンツの追加・更新
- ページ構成の見直し
- デザインの部分的改修
- SEO対策の強化
Check(評価)
実施した施策の効果を定期的に測定・評価します:
- アクセス数の変化
- 問い合わせ数の推移
- 検索順位の変動
- ユーザーの行動パターンの変化
Action(改善)
評価結果を基に、さらなる改善策を検討・実行します。
競合分析と差別化戦略
定期的に競合他社のホームページを分析し、自社の優位性を明確にすることが重要です:
- 競合サイトのコンテンツ内容と更新頻度
- 検索結果での競合の順位変動
- 競合が使用している技術やデザイン傾向
- 競合のSNS活用状況
この分析を基に、競合とは異なる独自の価値提案を強化していきます。
長期的成果を生む改善項目
1. コンテンツマーケティングの実践
定期的なブログ更新や事例紹介により、検索エンジンからの評価向上と顧客との関係強化を図ります。
2. ユーザーエクスペリエンス(UX)の継続改善
ユーザーの行動データを分析し、より使いやすく、目的を達成しやすいサイト構造に改善していきます。
3. モバイル対応の最適化
スマートフォンユーザーの増加に対応し、モバイルでの表示速度や操作性を継続的に改善します。
4. セキュリティ対策の強化
新しい脅威に対応するため、セキュリティ対策を定期的にアップデートします。
これらの継続的改善により、競合他社では真似できない、独自の価値を持つホームページを構築することができます。重要なのは、短期的な成果に一喜一憂せず、長期的な視点で着実に改善を積み重ねることです。
優秀な制作会社であれば、これらの継続改善プロセスをサポートし、お客様と一緒になって成果の向上を目指してくれるはずです。そのような制作会社をパートナーとして選ぶことが、ホームページ制作成功の鍵となります。
全体の要約
ホームページ制作を検討される方にとって最も重要なのは、制作費だけでなく運用リスクも含めた総合的な投資判断を行うことです。制作後の保守管理を軽視すると、サイト乗っ取りやデータ消失などにより、制作費を大幅に上回る損失を被る可能性があります。IPA(情報処理推進機構)の調査では、サイバーインシデントによる被害額の平均が73万円、10社に1社は100万円以上の被害を受けているという現実があります。
制作会社選定時には、価格だけでなく、WordPressなどのCMSのセキュリティ対策能力、緊急時の対応体制、保守管理サービスの具体的内容を必ず確認することが重要です。優良な制作会社であれば、事業規模に応じた段階的なプランを用意し、お客様に適切な提案ができるはずです。
最も大切なのは、ホームページを「作って終わり」ではなく、継続的に改善・運用していく資産として捉えることです。制作段階から運用を意識した設計を行い、信頼できる制作会社と長期的なパートナーシップを築くことで、競合に差をつける効果的なホームページ運用が可能になります。適切な初期投資と継続的な改善により、ホームページは確実に事業成長の重要な柱となってくれることでしょう。


