採用ホームページで中小・零細製造業(町工場)が優秀人材を惹きつける4つの秘訣

「求人出しているけど、全然人が来ぉへんわ」――先日おじゃました大阪の町工場で、社長が漏らしたひと言です。
大手製造業と同じ土俵で勝負しても負け戦になりがちな中小・零細製造業の採用市場。しかし町工場には、大手が真似できない“体温”があります。これを求職者に届ける最短ルートが、実は採用ホームページ。求人票では3行で済まされる「仕事内容」を、写真も動画も交えて語れる舞台装置です。
 本コラムでは、IT 用語が苦手な方向けに専門語の即時補足を挟みながら、「サイトを作る前の下ごしらえ」から「公開後の改善サイクル」まで、4つの秘訣を深掘りします。カレンダーと睨めっこしながら「来春までには3名採りたい」と焦る採用担当の方ほど、最後まで読んでみてください。きっと“今日やるべきこと”が見えてきます。

1 中小・零細の製造業(町工場)にこそ採用ホームページが必要な3つの理由

1-1 中小・零細の製造業が抱える「応募ゼロ」の現状

ハローワークの求人票に「未経験可」「土日休み」と書くだけでは、求職者の心は動きません。実際、ある町工場では昨年1年間で応募が2件、面接辞退1件、採用0。理由は明快で、「会社名をググっても古い会社概要しか出てこないので不安」「仕事内容がイメージできないからエントリーを躊躇」という声ばかり。情報が少ないほど人は警戒します。中が見えないお店には入りづらいのと一緒です。

1-2 求人媒体にはない“自分ごと化”の力

求人サイトのテンプレートに原稿をはめ込むと、隣の会社も斜め向かいの会社も、まるでコピー品のような求人情報が並びます。ところが採用ホームページなら、作業服のまま談笑する社員の写真を大きく配置し、「1日の流れ」をコミック風に描くことだって自由自在。求職者は「工場と聞くと怖そうなイメージだったけど、雰囲気の良さそうな職場だな。」と自分ごと化できます。

1-3 母集団形成を助ける“24 時間人事部

通学時間にスマホをいじる求職者、現在就業中で昼間は時間が取れない再就職希望者――彼らが会社の情報を探すのは深夜だったり早朝だったり。採用サイトは24時間働く人事部。しかも残業代ゼロ。

実際に採用サイトを導入した町工場では、これまで取りこぼしていた層からの応募が増えたという報告もあります。特にアクセス解析を見ると、夜間のアクセスが昼間を上回っていたケースも多く、求人票だけでは届きにくい層が確実に存在することがわかります。

2 採用ホームページ制作前に整理したい3つの土台

2-1 ペルソナ設定で欲しい人材像を可視化

「若い人がほしい」と口にする採用担当は多いものの、年齢以外の条件が曖昧では“誰にも刺さらない発信”になりがちです。ペルソナ(=ターゲットを具体的な人物像に落とし込む手法)設定のコツは、実在の社員1名をモデルにすること。たとえば「入社4年目の山田くん」を参考に、

  • 機械科卒、趣味はバイクいじり
  • 地元への愛着が強く、家族と同居中
  • 将来は技能検定1級を取りたい

と具体化すれば、トップページのキャッチコピーも「技能検定1級を目指すなら、現場で磨ける環境がここにある」に変えられます。

2-2 自社の魅力を棚卸しするコンテンツシート

Excel でOKなので、横軸に「設備」「製品事例」「働き方」「福利厚生」「地域貢献」などを並べ、縦軸に「写真」「エピソード」「数字」「キーマンコメント」といった見せ方を記入します。空欄が目立つ項目こそ、実は“伸びしろ”。たとえば「地域貢献」の欄が空白なら、地元中学の職場体験の様子を追加取材するチャンス、といった具合にコンテンツの穴を見つけられます。

2-3 競合分析で差別化ポイントを発掘

例えば同じエリアに3社の板金工場があるとしたら、それぞれの採用ページをじっくり観察してみましょう。A社は「資格支援」、B社は「最新設備」、C社は「完全週休二日」を押し出している――では自社は? 「鉄だけじゃなくアルミも得意」「試作品1点から歓迎」といった強みが浮かび上がるかもしれません。差別化は“ここだけ情報”を増やすこと。競合のページをブックマークしておいて、更新タイミングや推しポイントの変化を定期的にチェックする習慣が効きます。

3 製造業(町工場)の魅力を伝える採用ホームページのコンテンツ設計

3-1 未経験者歓迎のストーリーで安心感を伝える

町工場の現場は、経験者だけでなく未経験からスタートしたスタッフも多いのが実際です。「未経験から一人前になった先輩の声」「入社後の研修やサポート体制」など、最初は何も分からなかった社員が、どのように仕事や職場に慣れていったのか、リアルなストーリーを紹介します。

たとえば「最初は工具の名前すら分からなかったけれど、3ヶ月で自主的に機械の調整まで任せてもらえるようになった」など、成長の過程を具体的に描きましょう。こうしたエピソードは、これから応募を考える人に「自分もやれるかも」と安心感を与えます。

3-2 福利厚生・職場環境の“見える化”でアピール

町工場ならではのアットホームな雰囲気や、働きやすさを伝えるコンテンツも大切です。たとえば「お昼はみんなで仕出し弁当」「毎年恒例の社内バーベキュー大会」「自転車・バイク通勤OK」や「有給取得率の高さ」「残業ほぼなし」など、求職者が気になるポイントを写真や数字とともに掲載します。

実際の休憩スペースや作業着、現場の掃除当番表など、日常を切り取ることで「どんな職場なのか」が具体的にイメージでき、安心して応募できる雰囲気づくりにつながります。

3-3 技術継承ストーリーでキャリアパスを描く

「キャリアパス? うちは職人の世界だから説明しづらいよ」とよく言われますが、だからこそ説明する価値があります。たとえば以下の4段階でグラフィックにすると、一目で“成長の道筋”が見えて安心感が生まれます。

  • 1年目:材料の名称と工具の扱いを覚える
  • 3年目:NC旋盤のプログラム作成を担当
  • 5年目:新規案件の工程設計を任される
  • 8年目:後輩3名のリーダー、工程改善の提案者

加えて「5年目で資格取得支援の制度を使い○○検定合格」とか「8年目で年収がいくらアップ」といった具体数字を脚注で補足すると、求職者のイメージが鮮明になります。

3-4 社員インタビューで働きがいを言語化

インタビューは“質問3つ主義”が鉄則。

  • 1)この会社に入った決め手は?
  • 2)今までで一番しびれた仕事は?
  • 3)将来どんな技術者になりたい?

一問一答方式にすると読みやすく、回答が長くても要約せず原文の息づかいを残します。ある若手は「オイルの匂いをかぐとテンションが上がる」と答えました。これを削らず載せたところ、同じ“匂いフェチ”の応募者が集まったという笑い話も。個性のある言葉こそコンテンツの宝です。

3-5 スマホ表示を最優先にする理由(町工場の応募者目線で)

町工場の採用サイトに訪れる方の多くは、高卒新卒や、普段からパソコンにあまり触れない転職希望者が中心です。実際、今どきの若手や現場経験者の多くはスマートフォンで情報収集をしています。

そのため、採用ホームページも「スマホで見やすいこと」が最優先です。文字サイズは小さすぎず(16px以上が目安)、ボタンやリンクは指一本で押しやすいように配置します。また、応募フォームもスマホから入力しやすく、入力項目はできるだけ少なくするのがポイントです。

実際、PCよりもスマホ利用者のほうが「ちょっと気になったから見てみよう」と気軽にアクセスします。応募のハードルを下げるには、スマホでの表示や操作性を意識してサイトを作ることが、町工場の採用成功に直結します。

4 公開後に成果を伸ばす改善サイクル

4-1 アクセス解析で見るべき KPI

Google アナリティクスの画面を開いたら、まず「集客>概要」で検索流入(Organic Search)の数を確認。次に「行動>サイトコンテンツ>ランディングページ」で、どのページから入った人が多いかを把握します。

最後に「コンバージョン>目標」の設定で、応募フォームの送信完了 URL をゴールにすれば CVR が自動計算されるように。数値が上がった下がったを毎月 A4 1枚にまとめ、社内会議で5分でも共有すると、継続改善の文化が根づきます。

4-2 PDCAを回す定期更新スケジュール

“更新ネタがない”といって放置される採用サイトほど、ユーザーの信頼も落ちていきます。対策は「毎月のテーマ」をあらかじめカレンダーに書き込むこと。

4月:新入社員紹介、5月:GWに自社製品が活躍したシーン、6月:梅雨時の現場安全対策――など季節とリンクさせるとネタ切れしません。

更新後は2週間ほど数値を観察し、平均滞在時間が前月比+15秒なら成功、といった小さな評価を積むことでモチベーションが続きます。

4-3 SNS・求人媒体との連携でリーチを拡大

採用と公式 Instagram、実は相性抜群です。削りカスのキラキラ写真や極小ネジのマクロ写真は“映える”素材。投稿文にハッシュタグ「#町工場採用」「#ものづくり好きと繋がりたい」を入れ、プロフィールに採用サイトの URL を貼るだけで OK。

さらにハローワークの求人票や求人媒体の原稿に「詳しい雰囲気は採用ホームページへ」と QR コードを添えると、オフライン→オンライン導線が完成。リーチ拡大は掛け算です。

用語解説

  • SEO(Search Engine Optimization)
    検索エンジンで上位表示させるための施策。キーワード選定やサイト速度改善などの総称。
  • UX(User Experience)
    ユーザーがサービスを利用したときに感じる体験価値。使いやすさや感情的満足度を含む。
  • メタタグ
    検索結果一覧に表示されるタイトルや説明文などを HTML で指定するタグ。
  • CVR(Conversion Rate)
    サイト訪問者のうち、応募フォーム送信など目的の行動を完了した割合。
  • ペルソナ
    理想的なターゲット像を、一人の架空人物として具体的に描く手法。
  • KPI
    Key Performance Indicator の略。目標達成度を測るための重要指標。
  • PDCA
    Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)を回し続ける方法論。
  • CTA
    Call To Action の略。ユーザーに「応募する」「問い合わせる」など行動を促す仕掛け。

5 まとめ:採用ホームページで中小・零細製造業(町工場)が優秀人材を惹きつける4つの秘訣

町工場の強みは、数字やスペックだけでは伝えきれない“手ざわり”にあります。真剣に工作する眼差し、機械のリズム、職人の笑顔。採用ホームページは、それらを丸ごと詰め込んだキャンバスです。

「まずは写真を1枚撮ってみる」「トップページに社員の声を1行加える」――小さな一歩でもいいので今日から動きましょう。情報を出せば出すほど“会社のファン”は増えていきます。その中から未来のエースが現れる瞬間を、ぜひ楽しみにしていてください。