迷惑な問い合わせフォーム営業の対策

「また営業メールか…」。朝一番にメールチェックするたびに、ため息をつく経営者や担当者は決して少なくありません。本来であれば新規顧客からの問い合わせや既存顧客からの相談や連絡が届くはずの窓口がいつの間にか営業メールばかりが届いてしまう。

実際、弊社のお客様からも「問い合わせフォーム営業に困っている」という相談をいただきます。1日に10件、多い時は20件以上の営業メールが届き、本当のお客様からの問い合わせを見逃してしまう不安を抱えている企業も少なくないのではないでしょうか?
またアクセス解析のコンバージョン計測にも影響を及ぼしてしまいます。

このコラムでは、そんな迷惑な問い合わせフォーム営業への対策事例を紹介いたします。

問い合わせフォーム営業の実態と企業への影響

1-1 1日に何通営業メールが届くのか?実際に調査してみた結果

問い合わせフォーム営業の実態を正確に把握するため、弊社では実際にとある平日の0時から24時までの24時間で、お問い合わせフォームに何通の営業メールが届くかを詳細に調査しました。その結果は、わずか1日で15通もの営業メールが届いていたのです。

これを月単位で計算すると、営業日だけでも約300通、土日も含めれば月間450通以上の営業メールが届く計算になります。仮に1通の確認・削除に30秒かかるとすれば、月間で約225分、つまり3時間45分もの時間が営業メールの処理だけに費やされていることになります。

調査期間中も、特定の営業代行会社から3日連続で同様の内容のメールが届き、中には「前回のメールをご確認いただけましたでしょうか」といった図々しい内容のものもありました。これらの業者はシステム化された大量送信を行っているのでしょうか。

1-2 営業メールの種類

受信した営業メールの種類を見ると最も多いのがITツール系の営業で、全体の約40%を占めています。「業務効率化ツール」「会計ソフト」「顧客管理システム」「セキュリティソフト」などのメールが頻繁に届きます。

次に多いのが採用系の営業で、全体の約30%を占めています。「採用代行サービス」「求人媒体の提案」「採用支援」といった内容が中心で、特に最近増えてきた印象です。人手不足が深刻な中小企業をターゲットにした営業が目立ちます。

三番目に多いのが営業支援系で、約20%を占めています。「テレアポ代行」「営業リスト提供」「WEBマーケティング支援」などです。

弊社はWEB制作会社のためWEBサイト制作に関する営業メールは少ないのですが、一方で、WEB制作会社向けのサービス(制作ツール、素材提供、外注先紹介など)の営業メールは非常に多いです。

営業メールへの対策

さて、そんな営業メールへの対策としてクレフで取り組んでいる事例、お客様に提案した対策の事例を紹介いたします。

2-1 注意文をお問い合わせフォームに掲載する

最も基本的でありながら効果的な対策の一つが、お問い合わせフォームに営業メールお断りの注意文を明確に掲載することです。

上記画像のような内容でも良いですし、より削減させたい場合は以下のような少しキツめの注意文も効果的です。

「※営業・売り込み目的のお問い合わせはご遠慮ください。営業メールと判断した場合、返信いたしかねます。また、特定電子メール法に基づき、事前承諾のない営業メールの送信は法的措置の対象となる場合があります。」

しかし、実際のお客様が問い合わせフォームに入力する際に怖い印象を与えるかもしれないのでさじ加減が重要です。

2-2 営業メールではないことへの同意チェックボックスの設置

より確実な対策として、問い合わせフォームに「営業・売り込み目的ではないことに同意します」というチェックボックスを必須項目として設置する方法があります。このチェックボックスは、送信者に営業目的ではないことを明示的に宣言させる効果があります。

チェックボックスの文言例:「商品の営業・売り込み・挨拶等に関するメールでは無いことに同意します。」

この方法は、業者が虚偽の申告をしてメールを送信した場合、より明確に「悪質な営業行為」として認定できる利点もあります。

2-3 reCAPTCHA導入による自動送信対策

Google が提供するreCAPTCHA(リキャプチャ)の導入も効果的です。

reCAPTCHAは、自動送信プログラム(bot)による営業メールやスパムメールを防ぐツールです。最新のreCAPTCHA v3では、ユーザーの行動パターンを分析してスコア化し、怪しい送信を自動的に検出します。
従来の画像認証のような煩わしい操作を求めることなく、背景で自動的にbot判定を行うため、ユーザビリティを損なうことなく導入できます。

ただし、reCAPTCHAは完璧ではなく、人間が手動で送信する営業メールは防げませんので、他の対策と組み合わせて使用することが望ましいです。

2-4 営業専用フォームの設置による住み分け

クレフがWEB制作会社という性質上、フリーランスのクリエイターや同業者からの営業メールが非常に多く届きます。これらの中には実際に有益な提案も含まれているため、一律に遮断するのはもったいないということで導入したのが「営業専用フォーム」の設置です。

営業専用フォームは、通常のお問い合わせフォームとは別に設置し、営業・提案目的の連絡専用として運用します。このフォームには以下のような特徴を持たせています:

この住み分けにより、通常のお問い合わせフォームに届く営業メールは約70%減少し、一方で営業専用フォームには毎日5~10件程度のメールが届いています。

法的対処法と相談窓口

3-1 特定電子メール法に基づく対処方法

悪質な問い合わせフォーム営業に対しては、法的な対処も可能です。特定電子メール法(正式名称:特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)では、事前の同意なく営業メールを送信することを原則として禁止しており、違反した業者には総務省から行政指導や業務改善命令が下される可能性があります。

同法に違反する営業メールの典型的な特徴として、以下の点が挙げられます。

3-1-1 配信停止の方法が明記されていない

法律では、受信者が配信停止を求めた場合に応じる仕組みを明示することが義務付けられていますが、多くの悪質な営業メールではこの記載がありません。

3-1-2 送信者の連絡先が不明確

法律では送信者の氏名または名称、住所、電話番号等の連絡先を明記することが求められていますが、営業メールの多くは会社名すら記載されていない、または虚偽の情報が記載されているケースがあります。

3-1-3 虚偽の件名や差出人名を使用している

「重要なお知らせ」「請求書について」といった、営業とは関係ない件名で受信者を欺く行為は明確な違反行為です。

(参考:特定電子メールの送信の適正化等に関する法律


まとめ:迷惑な問い合わせフォーム営業の対策

問い合わせフォーム営業の問題は、もはや単なる「迷惑メール」という範囲を超え、中小企業の業務効率や顧客対応品質に深刻な影響を与える経営課題となっています。弊社の実体験からも明らかなように、1日15通、月間450通以上の営業メールが届く現実は、決して他人事ではありません。

しかし、本記事でご紹介した対策を組み合わせることで、迷惑な営業メールを削減することが見込まれます。
そして重要なのは、対策を一度実施して終わりではなく、継続的な改善を続けることです。営業手法は常に進化しているため、対策も定期的にアップデートが必要です。

もし技術的な対策の導入に不安がある場合や、より高度な対策をお求めの場合はクレフまでご相談ください。ご連絡お待ちしております。